ねえ、皆さん! 『ピーナッツ』といえば、誰を思い浮かべますか?
もちろん、我らがチャーリー・ブラウン、クールなスヌーピー、おせっかいなルーシー、哲学者のライナス…まあ、鉄板ですよね!
でも、ちょっと待った!
1950年10月2日、記念すべき『ピーナッツ』の連載第1回。
その歴史的な瞬間、ベンチに座っていた少年を、あなたは知っていますか?
そう、彼こそが今回の主役、シャーミー (Shermy) です!
記念すべき第1話で、彼は向かって歩いてくるチャーリー・ブラウンに、いきなり「きみがきらい!」(HOW I HATE HIM!) と言い放ちます。
衝撃的すぎるデビューですよね。
シャーミーは、チャーリー・ブラウン、そしてパティ(ペパーミント パティじゃないほうの、初期の女の子ね)と共に、『ピーナッツ』の物語をたった3人でスタートさせた正真正銘の「オリジナル・メンバー」の一人でした。
なのに、なぜでしょう?
あれほど強力な個性を持つルーシーやライナス、シュローダーたちが登場するにつれ、シャーミーの存在感はどんどん薄くなり…
いつしか、彼は物語から静かに姿を消してしまいました。
「え、そんな男の子いたっけ?」
「スヌーピーの最初の飼い主だったって本当?」
「なんで消えちゃったの?」

この記事では、そんな『ピーナッツ』最大の謎の一つ(と個人的に思ってる)、忘れられがちな初期主要キャラクター、シャーミーにガッツリとスポットライトを当てていきます。
彼の知られざる歴史、人物像、そして「なぜ彼は消えなければならなかったのか」という切ない背景まで、徹底的に掘り下げてみましょう!
さあ、『ピーナッツ』の奥深い歴史の旅へ、レッツゴー!
シャーミーとは?『ピーナッツ』を始めた「最初から登場」男の子
まずは「シャーミーって誰?」という方のために、シャーミーの基本情報からおさらいしましょう。
『ピーナッツのシャーミー』記念すべき第1話に登場したセリフのある男の子

シャーミーは「1950年10月2日の第1回」に登場します。
この時点で、シャーミーはすでにチャーリー・ブラウンの「知り合い」でした。
最初は友達よりも「知り合い」ってイメージかなと思います。しかも、少し関係性は良くなさそう。
第一回目の話のシャーミーの辛辣な一言が『ピーナッツ』の世界観(特にチャーリー・ブラウンの不憫さ)を決定づけたとも言えます。
ちなみに、シャーミーという名前は、作者チャールズ・M・シュルツ氏の高校時代の友人であるシャーマン・プレプラー (Sherman Plepler) 氏から取られたそうです。
実在の友人の名前を、自分の作品の最初のキャラクターの一人につけるなんて、なんだかエモいですよね。

『リトル・フォークス (Little Folks)』は、チャールズ・M・シュルツが『ピーナッツ』を始める以前に、新聞などに連載していた漫画作品のことです。
キャラクター名としての「チャーリー・ブラウン」の初出は『リトル・フォークス』ですが、連載漫画『ピーナッツ』での公式な初登場は、1950年10月2日の第1話目です。
1950年10月2日の第1話目の内容は「リトル・フォークス」に連載されたものを書いたものです!


後に『ピーナッツ』の主人公となる「チャーリー・ブラウン」という名前が登場☆
ピーナッツ作品の登場キャラクター 初期メンバーはたったの3人と1匹


オリジナルのピーナッツキャラクターの4人全員が登場した最初の連載シーン
今や大家族の『ピーナッツ』ギャングですが、連載開始当初の登場人物は、
- チャーリー・ブラウン・・・1950年10月2日から登場
- シャーミー・・・1950年10月2日から登場
- パティ (Patty)・・・1950年10月2日から登場
- スヌーピー・・・1950年10月4日から登場
このたった3人とスヌーピーの1匹だけでした。(スヌーピーは数日後に登場します)
つまり、シャーミーは『ピーナッツ』のはじまりを支えたとっても重要な人物だったわけです。



次に登場したキャラクターは1951年2月7日「ヴァイオレットが初めて登場して、チャーリーブラウンが初めて恋を知ります」




初期メンバーでの恋路♡シャーミーはパティに好意をもっていた?


(パティ セリフ)
WILL YOU STILL LOVE ME WHEN YOU'RE GROWN UP AND ARE RICH AND FAMOUS, AND I'M JUST A POOR LITTLE GIRL?
シャーミーが大人になって、お金持ちで有名になって、
私がただの貧しい小さな女の子でも、まだ私を愛してくれる?
(シャーミー セリフ)
SURE, I WILL...
もちろん、愛すよ...
(シャーミー セリフ)
...AND WILL YOU STILL LOVE ME IF YOU GET RICH AND FAMOUS, AND I DON'T HAVE ANYTHING?
...それで、もしシャーミーが金持ちで有名になって、
僕に何もなかったら、それでも私を愛してくれる?
(パティ セリフ)
THAT WILL BE DIFFERENT!
それは話が別だよ!


チャーリーブラウンが、「FLOWERS FOR SALE(花、売ります)」と書かれた箱に入った花を売っています!
そこに、シャーミーとパティがデートで通りかかります。(スヌーピーは付き添い)
シャーミーはチャーリーブラウンに「お花を一輪頂けます?」と話しかけます。
これは!!デート相手のパティにお花をプレゼントするの?っていうシーン。
パティもとっても期待して「笑顔」に溢れています♡
次のシーンでは、シャーミーはスヌーピーにお花をプレゼント!?
全然わかってないシャーミーにパティも不機嫌。
シャーミー。これじゃ女の子の気持ち(理解度)がマイナスですね。
【シャーミーって?】初期のピーナッツの「主役級」
「どうせ最初からモブキャラだったんでしょ?」と思ったら大間違い!
1950年から1953年頃までの約3年間、シャーミーは紛れもなく主要キャラクターの一人として、バリバリ活躍していました。
【シャーミーって?】チャーリー・ブラウンの「唯一無二」の友達だった


今でこそチャーリー・ブラウンの親友といえば、哲学的なライナスが定番ですよね。
でも、ライナスがまだ赤ちゃん(というか、セリフすらない)だった時代、その「頼りになる友達」ポジションを担っていたのが、何を隠そうシャーミーだったんです!
彼らは一緒におもちゃで遊び、悩み事を相談し、時には他愛のないケンカもする。
まさに「仲の良い友達」そのものの姿が描かれていました。
チャーリー・ブラウンにとって、シャーミーは最初の「良き理解者」であり、話し相手だったのです。





実はシャーミーはチャーリーブラウンよりも年上だったそうです!
年齢を超えた友情‼素晴らしいですよね♡
【シャーミーって?】冷静沈着なツッコミ担当




シャーミーの大きな役割の一つが、常識人としてのツッコミ役でした。
チャーリー・ブラウンが何か突拍子もない空想を始めたり、不運に見舞われて落ち込んだりすると、シャーミーが横から冷静な一言を浴びせる。
この構図は、初期『ピーナッツ』の定番でした。
物語が非現実的な方向にいきすぎないようにする「調整」のような役割も持っていたんですね。
【シャーミーって?】ピーナッツの野球チームでも一応、活躍?


チャーリー・ブラウンの野球チームにも、シャーミーは初期から参加していました。
ポジションは、内野?を守っている姿が確認されています。
まあ、あのチームですから、彼が名プレイヤーだったかどうかは…ご想像にお任せします。



スヌーピーの方が、しっかりと活躍していますね!
なぜ消えた? ピーナッツの「シャーミー」 出番がなくなった初期主要キャラ
さて、ここからが本題です。
あんなに主要キャラとして活躍していたシャーミーが、なぜ、いつの間にか姿を消してしまったのでしょうか?
1954年頃からシャーミーの登場回数は目に見えて減少し始め、他の初期キャラ(パティやバイオレット)よりも早く、物語の「背景」へと追いやられていきます。
その背景には、いくつかのシビアで、ちょっぴり切ない理由がありました。
理由1:ニューフェイスが強すぎた! (ルーシー、ライナス、シュローダー)
最大の理由は、ハッキリ言ってこれです。
後から入ってきた新キャラクターたちの個性が、あまりにも強烈すぎた!!
- シュローダー (1951年登場)
- おもちゃのピアノでベートーヴェンを弾きこなす、孤高の天才ピアニスト。
- ルーシー (1952年登場)
- 超おせっかいで口うるさい、でも精神分析スタンドを開いちゃう(?)みんなの姉貴分(ガキ大将?)。
- ライナス (1952年登場)
- 安心毛布が手放せないくせに、聖書や哲学を引用する超インテリな一面を持つ、ギャップの塊。
どうですか、このラインナップ!
彼らが登場した瞬間から『ピーナッツ』の世界は一気に深みと複雑さを絡み合い、個性が強いキャラクターの出番がどんどん増えていきました。
その結果、何が起こったか?
シャーミーが持っていた役割が、ことごとく彼らに「奪われて」しまったんです。
- 「親友」ポジション → ライナスが継承
- 「ツッコミ」ポジション → ルーシーが(より強力に)継承
- 「個性」 → シュローダーのピアノ愛に勝てるはずもなく…
「常識人」で「普通の少年」だったシャーミーは、この強烈な個性派集団の中で、残念ながら居場所を失っていってしまったんですね。うーん、世知辛い!
理由2:作者シュルツ氏の衝撃の告白「個性がない」


さらに追い打ちをかけたのが、作者であるシュルツ氏自身のシャーミーに対する認識でした。
シュルツ氏は後年、シャーミーについてこんな風に語っています。
「読者をミスリードしない、ほとんど個性がないキャラクターが必要なときにだけ、シャーミーを使うことができる」
ひ、ひどい!(笑)
いや、でもこれは作者の正直な感想だったんでしょう。
シュルツ氏は、物語の「歯車」として、あえてシャーミーの個性を強く設定しなかったことを認めています。
物語がまだシンプルだった初期は、シャーミーのような「普通の少年」が主人公の隣にいることで、読者は感情移入しやすかった。
しかし、物語がより複雑で、キャラクターの内面や哲学的な対話を掘り下げるようになると、「個性がない」ことは、作家にとって「使いにくい」という致命的な欠点になってしまったのです。
理由3:まさかの「髪型が描きにくい」問題


これ、ちょっと笑っちゃう理由なんですが、シュルツ氏はシャーミーの「髪型」を描くのが気に入らなかったともコメントしているんです。
シャーミーの髪型は、最初こそ黒くフサフサしていましたが、1953年4月18日のストリップで散髪に行ってからは、彼のトレードマークとなる短いバズカット(坊主頭に近い短髪)になりました。
他のキャラクター(チャーリー・ブラウンのクルクル前髪、ルーシーの黒髪おかっぱ、ライナスのまばらな髪)と比べて、このシンプルなバズカットが、作者の美的センスや描写のしやすさにおいて、何かしらの制約になっていたのかもしれません。
漫画家にとって「描きにくい」「描いてて楽しくない」というのは、キャラクターの登場回数に直結する大問題ですからね…。
段階的なフェードアウトと「最後の登場」


こうして、シャーミーは静かにフェードアウトしていきます。
1950年代後半には彼の出番は稀(まれ)になり、1960年代には年間数回、セリフもなく背景に立っているだけ…なんてことも増えていきました。
そして、シャーミーがコミックで「公式に」最後に登場したのは、1969年6月15日の日曜版コミックとされています。 第1話の衝撃的なデビューから約19年。
彼は『ピーナッツ』の表舞台から完全に姿を消しました。
(ちなみに、名前だけが登場するのは1977年3月13日のストリップが最後。ルーシーが野球チームの指名打者(DH)として彼の名前を挙げていますが、もちろん本人は登場しませんでした…。)
シャーミーのトリビアと人物像 外見と性格
消えていったとはいえ、彼も『ピーナッツ』の歴史の一部。
ここで、シャーミーのもう少し細かい人物像やトリビアを見てみましょう。
シャーミーの外見的特徴:バズカットと服装


シャーミーの最大の特徴は1953年以降の「バズカット」。
服装は、長袖のボタンダウンシャツ(襟付き)に短パン、テニスシューズというスタイルが基本でした。
初期の夏場には、アロハシャツのような柄物のシャツを着ていることもあり、意外とおしゃれさん?だったのかもしれません。
シャーミーの性格:「常識人」ゆえの「没個性」?


彼の「個性のなさ」は、裏を返せば「常識人」であり「普通の子」であった証拠です。
でも、初期のストリップをよーく見ると、彼がチャーリー・ブラウンを「上回る」描写が結構あるんです。
例えば、ハロウィンでチャーリー・ブラウンよりもはるかに大きなカボチャのランタンを作ったり、立派な電車のおもちゃセットを持っていてチャーリー・ブラウンをうらやましがらせたり。
初期においては、シャーミーはチャーリー・ブラウンの「不運」や「持たざる者」っぷりを際立たせるための「持てる者」側のキャラクターとして機能していた側面もあったんですね。
最大の謎:スヌーピーの最初の飼い主はシャーミーだった?
さあ、皆さん! お待たせしました!
シャーミーにまつわる最大のミステリーにして、最も興味深いトリビア、それが「スヌーピーの最初の飼い主=シャーミー説」です!
「え? スヌーピーは最初からチャーリー・ブラウンの犬じゃないの?」 そう思いますよね?
でも、初期のコミックには、それを覆すかのような衝撃的な描写が存在するんです。
衝撃のコミック描写 シャーミーのセリフ「お風呂の時間だよ」


『ピーナッツ』の連載が始まって約1年後の1951年9月29日のストリップ。
雨の中をスヌーピーが走ってきて、ある家に入っていきます。
すると、その家の中にいたシャーミーがスヌーピーをタオルで拭きながらこう言うんです。
「お風呂の時間にちょうど間に合ったね」
…え? ええええ!?
これ、どう見ても飼い主とペットの会話ですよね?
この他にも、シャーミーがスヌーピーをリードにつないで散歩させている描写や、スヌーピーがシャーミーの家(犬小屋じゃなく、家の中!)にいる描写が、初期には確かに存在するんです。



ただ、このスヌーピーはシャーミーの飼い犬説は、最後までわからなかった確定できなかった)です。
ただとっても仲が良く、多くのシーンで一緒にいます。
スヌーピー自体が神出鬼没で、最初は誰とでも一緒に登場しているので、「スヌーピー野良犬説」の方が近いかもしれないですね。
なぜ「シャーミー飼い主説」はなくなってしまったのか?
この「シャーミー飼い主説」、なぜか公式にはあまり語られませんが、初期設定ではスヌーピーは「シャーミーの犬」だった(あるいは、特定の飼い主が曖昧だった)可能性が極めて高いと思います。
しかし、『ピーナッツ』という物語が、次第に「何をやってもうまくいかない少年チャーリー・ブラウンと、そんな彼を(基本的には)慕ってくれるユニークな犬スヌーピー」という関係性を軸に展開していくことが決定的になると、この初期設定は邪魔になってしまいます。
結果として、「スヌーピーはシャーミーの犬」という設定は自然消滅(あるいは、なかったことに)され、スヌーピーは公式に「チャーリー・ブラウンの犬」として、我々の知るあの犬小屋の主として定着していったのです。
もし、あのままシャーミーが飼い主だったら…スヌーピーはあんなに自由に空想の旅に出たり、タイプライターで小説を書いたりしなかったかもしれませんね。
アニメで輝いた「一言」:羊飼いの嘆き
コミックの世界では静かに消えていったシャーミーですが、意外にもアニメーションの世界では、その後もたびたび(脇役として)登場しています。
そして、彼にはアニメ史に残る(?)、あまりにも有名なセリフがあるんです!
『スヌーピーのメリークリスマス』(1965年) での短いセリフで登場


1965年に放送されたテレビスペシャル『スヌーピーのメリークリスマス (A Charlie Brown Christmas)』。
劇中で、クリスマス劇の配役が決まるシーンがあります。
みんなが思い思いの役をもらっていく中、シャーミーが一人、静かにつぶやきます。
「毎年クリスマスは同じさ。僕はいつも羊飼いの役だ」
(Every Christmas it’s the same: I always end up playing a shepherd.)
これ! このセリフです! たった一言。
しかし、これほどまでにシャーミーというキャラクターの本質を突き、彼の「個性のない」「脇役」としての立ち位置を逆手に取った、見事なセルフパロディがあるでしょうか?
コミックから消えていった彼が、アニメという新しい舞台で、自らの「脇役」としての運命を嘆いてみせる。
これは、シュルツ氏流の、初期キャラクターに対する最大限の「愛」だったのかもしれません。
この一言で、シャーミーは『ピーナッツ』ファンの心に永遠に刻み込まれることになったのです。
CG映画『I LOVE スヌーピー』(2015年) での復活


さらに時は流れ、2015年に公開されたCGアニメ映画『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』。
なんと、この映画にもシャーミーは(背景キャラとしてですが)ちゃんと登場しています!
コミックのバズカットとは少し違い、茶色の髪で、赤い半袖シャツに白いTシャツ、長ズボンという現代的なスタイルで描かれ、元気な姿を見せてくれました。
シャーミーに関するよくある疑問 よくある質問 (FAQ)
ここで、シャーミーに関するよくある疑問にお答えします!


まとめ:シャーミーが『ピーナッツ』に残したもの
さて、長々とシャーミーについて語ってきましたが、いかがでしたか?
シャーミーは、『ピーナッツ』という作品が、チャーリー・ブラウンという一人の少年を取り巻くシンプルな日常(と、ちょっとの皮肉)から、ルーシーやライナスといった多様な個性を持つ子供たちが織りなす、複雑で、時には哲学的ですらある唯一無二の世界へと進化していく過程で、その役目を静かに終えていったキャラクターと言えます。
彼は「最初のキャラクター」の一人として、『ピーナッツ』の歴史の幕開けを華々しく(?)飾り、そして「個性のない常識人」という役回りを引き受けることで、後から登場する強烈な個性派たちが輝くための、見事な「土台」となりました。
彼がいなければ、ライナスの親友っぷりも、ルーシーのツッコミのキレも、あれほど際立たなかったかもしれません。
シャーミーは、ただ消えた「忘れられたキャラクター」ではない。 彼は、『ピーナッツ』が半世紀にわたって愛され続ける偉大な作品になるために、必要な「バトン」を次の世代に渡した、静かながらも最も重要な功労者の一人なのです。
次にあなたが『ピーナッツ』の初期作品や『メリークリスマス』を観るときは、ぜひ隅っこにいる「羊飼いの少年」シャーミーを探して、彼のがんばりに思いを馳せてみてくださいね!









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